東京高等裁判所 昭和40年(行ソ)1号 判決
第一 再審被告プリンス自動車工業株式会社に対する再審の訴について
本件は、原告を本件再審原告、被告を本件再審被告山田亀吉及び石原重太郎(本件再審の訴提起当初の再審被告)とする東京高等裁判所昭和三六年(行ナ)第三一号審決取消請求事件の確定判決に対する再審申立事件であることは、本件記録に徴して明らかなところ、再審の訴においては、その対象である確定判決の当事者(又はその包括承継人)をもつて、その当事者とすべきものであることは、再審の訴の性質上、きわめて当然のことであり、したがつて、前記確定判決における当事者(又はその包括承継人)でないプリンス自動車工業株式会社(現在日産自動車株式会社)を再審被告とすることは許されるべきことではない(このことは、当審における再三にわたり求めた事実上の釈明及び昭和四十三年二月二十日付決定に徴しても明らかな筈のことである)。したがつて、右会社に対する再審の訴は、訴そのものが不適法といわざるをえないから、これを却下することとする。
第二 再審被告山田亀吉に対する再審の訴について
(争いのない事実)
一 原判決の言渡及び確定の事実は、関係当事者間に争いのないところである。
(再審事由の有無について)
二 再審原告は、原判決には、民事訴訟法第四百二十条第一項第一号、第三号、第九号及び第十号に該当する事由があり、取り消されるべきものである旨主張するが、その主張するところは、再審事由に対する誤解ないしは独自の見解に基づくものであり、もとより適法な再審事由とするに値しない。以下、これを分説する。
(一) 再審原告が本訴請求の原因(第二)の(一)において主張する事実は、そのような事実があつたことを認めるに足る資料は存在しないのみならず、仮にそのような事実があつたとしても、もとより民事訴訟法第四百二十条第一項第一号の再審事由に該当するものでないことは、多くの説明をもちいるまでもないところである。
(二) 原判決の基礎となつた訴訟手続において、該事件の被告であつた再審被告山田亀吉及び石原重太郎の訴訟代理人田之上虎雄につき右山田及び石原より適法な訴訟委任のあつたことは、一件記録中の委任状に徴し明らかであり、右委任につきこれを無効とすべき事由のあつたことを認めるに足る何らの証拠資料もない本件において、徒らに訴訟代理権の欠缺を云々することは全く理由のないことといわざるをえない。
(三) 原判決が、再審原告の請求にかかる特許庁昭和三五年再審第一号事件につき特許庁がこれを不適法として却下した審決の取消を求めた訴に対するものであることは記録上明らかである。しかして、このような内容の訴訟において再審原告が本件再審請求原因の(二)において主張するような事項が、その争点となりうべき筋合のものでないことはいうまでもないところであるから、原判決がこれについて判断をしなかつたといつて、これを目して判断遺脱とするは全く当らないことである。
(四) 再審原告は、原判決は、その主張の確定判決と牴触する認定をしたものである旨主張するが、これを認めるに足る資料は一つとして存在しない(むしろ、原判決がした判断は、従前存在した一連の関係訴訟とは、再審原告の主観的な受取り方とは全く別に、法律的には、何の関係もないものであることが一件記録上窺える)のであるから、再審原告の右主張も理由がないものといわざるをえない。